お買物のはなし・新旧おりまぜスローにやります

2011年12月20日

藤井厳喜の経済本

ロシアを例にとり「大きな経済危機の中で私達を守るのは現金でもゴールドでもなく人間どうしの助け合いだ」という考えを読んで藤井厳喜という人に興味を持ち、amazonにたくさんある中から新品・中古あわせて3冊買いました。年末だというのに近頃のamazonは出荷がすごく早くて、17日に注文したらその日に発送、18日に届いたのですが留守をしてしまったため、19日に受け取りました。どれから読もうか迷いますが、この「ドンと来い! 大恐慌」って書名にそそられました。



「ドンと来い! 大恐慌」
藤井厳喜・著
ジョルダンブックス・刊
2009年4月10日発行
1700円

いやあ元気のいい書名ですね! ほんまかいな。腰巻きで佐藤優が「血が騒ぐ」と「激賞」、本文に入る前の「推薦文」には西村真悟とか西部邁とか、肩書きでいうと元公安調査庁部長とか警察大学学長とか名を連ね、じゃっかんの方向性を感じないでもありませんが、まあ、いいでしょう。(とはいえ公式サイトでこの人の経歴を見ると、岡崎久彦と仕事してたりします。)この本は著者がとくに、これまで経済書など読まなかった人達にも読んでほしいという目的から、くだけた文体、およびサービスのてんこ盛りです。

まず最初にカラー折り込み「世界大恐慌のからくり」の図。巻頭に本の結論7項目を披露。すなわち、

  1. 本当の「大恐慌」は来ない
  2. 資本主義は終わらない
  3. アメリカ中心の世界経済は崩壊した
  4. アングラ・マネーが金融崩壊の引き金を引いた
  5. ブーム&バスとは繰り返される
  6. 日本は世界経済危機のなかで圧倒的に優位な立場に立っている
  7. 大恐慌サバイバル術を教えよう!
最後にフード・コンサルタントとの対談、巻末には32ページの特別付録、「話題の『大恐慌本』徹底検証」で19冊の目次付き書評!(私はここから読み始めました。)

状況の解説では、私が2008年のリーマンショック以降に読んだり聞いたりしてきたようなことが、......なんだ、......だね、といった話し言葉調で、確かに読みやすく書かれていました。

しかし後半の、大不況の解決策の段になると、えーーーっっっ?!?!でした。「ユダヤ人に学び、ユダヤ人を日本んに呼び込んで繁栄しよう」というのです。ちょっと。「ユダヤ人」が鍵ですか? 最初に披露した7項目の中に「ユダヤ人」なんて言葉はありませんでしたよ。そりゃあ悪いユダヤ人もいいユダヤ人もいるでしょう。しかし前半で解説したアメリカの成れの果ての金融業で大儲けしたのは誰だったの? (そういえば、その章で「金融ユダヤ人」とは一言も言わず、あの異常な金融業界のありようを「そうするしかなかった」と表現していましたね。「アメリカには残された方法が金融しかなかったから、しかたなく金融に進んで、その結果のリーマン・ショックであった」というふうで、好意的、同情的でした。)さらに「日本にユダヤ人の金融センターを」?!?! アメリカという賭場を失った人達に日本を次の賭場としてさしあげたいのですか? これじゃまるでリーマン・ショックの後にテレビで「今こそ郵貯でアメリカ国際を買いましょう」とのたまった元財務大臣です。(そういえば去年は「日本にユダヤ人1千万人移住計画」という噂がありました。ドンと来い、ユダヤ人がついている......)

「ユダヤ人」「ユダ金(金融鵜ユダヤ人、ユダヤ金融資本家)」「ハザール人」「グローバリスト」「グローバル・バンカーズ」......呼び方はさまざまですが、対象となる人間は(人間ではないという説もありますが)ほぼ同じです。「大小にかかわらず海外の優良な企業と手を組んで乗り切ろう」という意味なら、あえて「ユダヤ人」と限定する必要はないでしょうに。でもユダヤ人は「無やマイナスから物を作る能力」に長けているから、ユダヤ人でなけりゃ駄目らしいのです。(「無から有を作る」とは、まさに「銀行システム」を作れるようなユダヤ人?.....そういうのは.ユダヤ人の中でも近代以降世界の諸悪の根源じゃないんですか?)ああ、さすが岡崎氏とお仕事をした経歴はダテじゃありませんね。そうなると、上に揚げた本書の推薦者達の「愛国心」て......???

解決策はほかに2つあり、「ジャンジャン国債を発行して日銀が買い取る」ことと「政府発行紙幣」です。(ちなみに「日銀の買取り」は「禁じ手」です。)経済で私に持論はありませんが、こういう事柄はヤバイと言っている人のほうが説得力があると思います。80年代から顕著にオカシくなった日本人ひとりひとりの頭の中身や生活様式の切り替えも大事ではないでしょうか。

この本は昨年11月の刊行です。その時点で、この「大恐慌」を危惧される時代に日本と「円」がどれほど優位に立っているかを説き、だから怖がるな希望を持て、と言いたいところまではわかります。しかしその後311の大震災がありました。今読むと......ナルホド、だから「311人工地震」で「日本つぶし」が必要だったのね、というふうに思えてなりません。著者の考えに大震災後の変化があれば知りたいものです。

この本は60万部突破だそうで、amazonでの評判もすこぶる良いのです。(もちろん「ユダヤ人誘致」が受けたとは思いませんが。)悲観論の多いなかで「現実を知ることが大事」「若い人達に希望を与えたい」との趣旨はたいへん立派ですが、蓋を開けたらナ〜ンダ。経済に関心のなかった人が鵜呑みにしたら......とても恐いと思いました。




「国家破産以後の世界 After Japan's Default」
藤井厳喜著
2004年12月20日初版発行
光文社
950円

英単語やフレーズが多いせいか、横書きの本です。そしてどういう意図がわかりませんが、日本語の本文中、むやみやたらと日本文に対応する英単語や用語が併記されています。2004年の本とはいえ時事英語、経済英語のボキャブラリー補充に役立ちそうです。




「日本はニッポン! 金融グローバリズム以後の世界」
ケンブリッジ・フォーキャスト・グループ・編
藤井厳喜、渡邉哲也対談
総和社・刊
平成22年11月25日発行

まだ読んでいません。

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