お買物のはなし・新旧おりまぜスローにやります

2007年12月24日

《Cables, Diamonds, Herringbone》


Cables, diamonds, herringbone
Sabine domnick 著、Down East 刊

12月15日発売の新刊が、予定より少々遅れて今日届きました。奥付を見ると、2004年にドイツで出た本の英語版だそうです。書名の「縄、ダイヤ、ヘリングボーン」とは模様編みの名称で、イギリスの伝統的なセーターの一つ「ガンジー」を編むのに欠かせない模様です。日本ではフェアアイル、アランほど一般的じゃありませんが、「イギリスの伝統的なセーター」といえばその二つに「ガンジー」を加えた3つだろうと思います。

というわけで、この本はフィッシャーマン・セーター、中でもガンジーという種類のセーターを詳しく解説したものです。フィッシャーマンは文字通りイギリスの漁師さんが着ていたことに因みますが、性別年齢にかかわらず着られます。それどころか、大人の男や老人が着ればお洒落だし、女の人が着れば個性的だし、子供が着たら、もうカッコよすぎて許せないくらいです。ただし本物のフィッシャーマンには伝統的な編み方があり、ちょっと頭の切り替えが必要なほど独特です。しかしその作り方に従ってこそ本物、カッコよさの決め手なのです(と私は思います)。

私が十年ちょっと前に編物にはまったきっかけこそ「イギリスの伝統的な編物」でしたから、この種の本は何冊か持っており、編み方もひと通り理解したつもりです。(編むのは下手ですが。)でも好きだとやっぱり新しい本が出るたびに欲しくなります。それに、伝統的な編物では編み方は一つではなく、人によって微妙に異なるもので、そのあたりを見てみたい気持ちもあります。

この本は本格派のガンジーを編むための実用書です。編む過程を大きい写真で解説していて、説明の丁寧さで Beth Brown-Reinsel の「Knitting Guanseys」と並んでわかりやすいかもしれません。英文をあまり理解できなくても、メリヤス編みのセーターを編んだことがあれば、写真やイラストを見ながら編めるかも。パターン集もあります。本物のガンジーを覚えれば、おそろしく凝った本物のアラン編みのセーターも嘘のように楽に作れるのだと知ることでありましょう。作り方のついた作品がいくつもあります。2、3着編んで自信がついたら、Alice Starmore の「Fishermen's Sweaters」も夢じゃないでしょう。ほんとです。

2007年12月23日

電子チケット、体験と教訓



忌野清志郎の復活コンサートがあると知ったとき、行かねば!と思いました。一緒に行きたかった友達のMちゃんにメールを打つと、まるで乗り気じゃなくて、「チケットが取れないと思います」とのつれない返事。(たしかに久しぶりに再会したとき、もうあまり聞かないのだと言ってました。)しかし「チケットぴあ」というものを検索して「先行予約」(なにこれ?)というのが受付中でしたから、まだ大丈夫のはずだと主張しました。コンサートの前売り券なんてプレイガイドのカウンタで座席表を見ながら買う時代しか知らず、ネットで買うのは初めてで戸惑いましたが、ともかく試しました。Mちゃんが行かないならヤフオクに出すさと居直って2枚。

まずはぴあに会員登録をしなきゃいけません。それから目的のコンサートの先行予約を申し込むと、締切の日時の後に、枠より多ければ抽選を経てネット上で結果ががわかるというものです。予約できたチケット料金は自動的に引き落としになり、手に入れた人はいくつかの方法で実際のチケットを発券してもらう又はチケットに代わるものをダウンロードして、それを持ってコンサート会場へ行くという段取りです。(そういえば、前に行ったロンドンのライブハウスの予約がそんな感じでした。無数のコンサートがパソコン上で選べて、料金がカード決済で、自分の画面をプリントして持って行きましたっけ。)

たしか11月20日頃が締切で、私の画面を開くと丸印がついていたので、たぶんチケットが取れたのだと理解しました。そのことをMちゃんに告げると、日程上の都合はついたから行けるだろうとのこと。一安心して照会のコード番号などをメモして、そのうちコンビニかチケットぴあのカウンタで現物のチケットを出してもらおうと思いました。なにしろコンサートは来年2月。急いでチケットを手にして紛失したら困る‥‥‥‥なんて思ったのですが。

そして1ヶ月後の今日(21日)チケットぴあに行きました。出てきたチケットは武道館の2階。おっ、2階席ね。しかし時代は変わっていたのです。次の瞬間カウンタのおねえさんが「座席を確認しますか」と昔よく見た八角形の図を広げて指さした所、それはかつて「4階席」と呼んでいた場所でした。「え、え〜〜〜っ!?」と心で叫びました。それを察してか、おねえさんは「チケットが手に入っただけよかったですよ、完売ですから」と慰めてくれました。

経験があるんです、武道館の4階席。四半世紀の昔、キース・ジャレットのソロでした。何月か忘れましたが頃は真冬で、壁に近いような4階席の後ろのほうは空席も多く、少し前の席に移動しましたが、寒いのなんの、外にいるのと同じです。終わってから気づくと、手袋をしていたのに小指が紫色になっていました。「うわーん、凍傷だ。でも、たとえ小指がもげても今日のコンサートは良かったぞ〜」と強がってはみましたが、帰宅するなりお風呂場にぬるま湯とお湯の桶を並べ、交互にひたしならが長い時間をかけて両手を温めたのを思い出しました。

そしていろいろ考えました。たぶん今のコンピュータ式は昔とは違うのです。たぶん「丸印」が出た時点では権利だけで、座席は決まってなかったのだ‥‥‥‥そこにまったく考えが及びませんでした。だから、たぶん「丸印」を見てすぐに発券すればもっといい席だったろう、たぶん自動的にいい席から発券していくのだろう‥‥‥‥せめて一般予約開始前に発券していたら‥‥‥‥しかもこのコンサートは全席一律料金で‥‥‥‥トホホ。もっとも、本心をいえば、私はいいんです。このコンサートは私にとって一つの儀式みたいなもので、その意味では行ければいいんです。しかし、一緒に行ってもらうMちゃんは清志郎の古いお友達です。なんで高いお金(8千円)を払って最後列で(寒いだろうなあ)こごえながら聞かなきゃいけないの??? ああなんてことでしょう。

Mちゃんからの返事のメールはまだない‥‥‥‥

2007年12月21日

番外・サントリーホールの「P席」


「いつでもお誘い歓迎」状態で再びいいことがありました。なぜかいろいろな招待券が手に入る日本美術研究のPさんから2日後のサントリーホールでの「第九」の切符があるとのこと。出演は読売日響、指揮・下野竜也、合唱・新国立劇場合唱団、ソリストが林正子、坂本朱、中鉢聡、宮本益光。私はいろいろな音楽を聞き、クラッシックも好きですが、壮大な交響楽というものは概して苦手です。しかし、ベートーベンの「交響曲第9番、合唱付き」といえば、私、昔、アマチュア合唱団で歌ったことがありますよ。今でもシラーの詩、あやしげに歌えますよ。久しぶりにそんなことを思い出し、ぜひ聞きに行きたいとお返事しました。

20日の夕刻、ホール前で会うなりPさんは悪い席しか取れなかったと言いました。彼女が持っていたのはチケットの引換券で、今日はホールに来るのが遅れていい席が残ってなかったそうです。「オーケストラの後ろ側なの。あとは一番前の席。前のほうがよければ交換してもらう」と済まなそうでしたが、私は後ろ側は初めてで、却って面白いんじゃないかと言いました。

サントリーホールのステージの後ろ側一帯が「P席」です。パイプオルガンの下です。私達の席はその一番前の左よりでした。いつもと違う眺めがこんなに面白いなんて。ステージは自分の真下にあり、なぜか小さく見え、オーボエやコントラバスなど、置いてある楽器からとても近いのが素敵です。ただしすぐ左前方のティンパニに、Pさんは「大きい音は苦手〜」と心配気です。「第九」ならではの合唱隊が立つ台は更に近くにあり(実際に歌手達が並ぶと、身を乗り出せば髪の毛をつかめそうでした)、普通の正面の席は、遥か彼方に小さく見えます。向こうからはこちらがどう見えるのかしらむ、あんな席でお気の毒と思うならスットコドッコイですよ!

やがて演奏が始まりました。静まり返ったホールで、オーケストラの中央から最初の小さな音が生まれるなり、なんて響きがいいのかと思いました。ホールのせい? 位置関係では、まるで真冬の冷たい朝の三宝寺池のほとりに立って、水面にあがる湯気を見るようです。つまりオーケストラが池の中にいるような感じです。普通のコンサートホールの客席では、音が前方からやってきますが、P席では、目の前で音が湧き上がります。それが天井の、段々にふくらんだ丸みいっぱいに響き、その音を浴びているように感じるのです。そんな中で迎える最終楽章は圧巻でした。P席では歌手の顔が見えませんが、指揮者の表情をつぶさに追えるほうが興味深いと思います。一方、確かにティンパニは大きな音でした。しかしもともと思いきり目立つパートですからね。問題はトライアングルで。小さく聞こえるべきものでも真後ろではかなりのもので、耳が‥‥‥‥。また、席が左寄りだと音はどうしても右寄りになります。しかし全体を通して、こんなにゴージャスな音楽は初めてでした。こんど機会があったら、ぜひP席最前列中央を体験したいものです。

さて、演奏者の「読売日響」ですが。(「読響」と「日フィル」のM&Aかと思いましたら、「読売日本交響楽団」で1962年設立だそうです。無知です。)私はろくに聞きもせず日本のオーケストラをなめていました。日本人の交響楽にはどこか「譜面どおり」という印象があり、正しく演奏しているけれど、楽器の音が演奏者の肉体まで共鳴していないような物足りなさや限界、そんな偏見を持っていたのです。しかしこの日の演奏にはそんな所がまったくなく、溢れるような豊かで繊細な音楽を響かせました。そりゃそうかもしれません。私が知り得る数十年の間には世代交代もあり、かつてよりずっと深くヨーロッパの音楽や文化に関われる環境が整った時代の演奏家達なのだろうと思ってみたり。それはたぶん歌手も同じで、とくにソプラノは濃厚で艶があり、いい声でしたし、合唱も人数から想像できないほど迫力がありました。もちろん意地悪を言うなら、「第九」は日本の十八番だからかもしれません。毎年暮れには連日演奏するのですから、そんな曲は他にないし、誰もがどの曲よりも精通しているかもしれません。しかし、とまれ、私は大いに演奏を楽しみ、ベートーベンなんか好きじゃないけど、いずれにせよ、やはり、「第九」は名曲だと思いました。(12月20日)

パン屋の PAUL

かつてはアークヒルズの森ビルに職場があり、六本木の駅を下りて毎日通った道ですが、今では別の町のように何もかも初めてでした。サントリーホールからの帰り道、アークヒルズを出てすぐに地下鉄南北線の六本木一丁目駅ができ、泉ガーデンという巨大なビルの中にありました。途中までPさんと一緒に帰ろうと下りていくと、駅の手前でガラス越しに何やら明かりを点す食べ物屋が見えました。Pさんは「ポール」だと言いました。近年上陸したフランスのパン屋さんで、支店を増やしているところだそうです。ちょっと寄り道しました。

夜遅かったので品物は少なかったのですが、どれも本物っぽいパンの色をしていました。通りすがりなど、初めてのお店で買うのはカンパーニュとかブールという丸パンです。一番割安で、粉の良さが一番よくわかるからです。(バケットも同じですが、バケットは私にとって堅い所が多すぎるんです。)このお店にはそういうのがないので、同じ種で作ったに違いないナマコ型のパンと、イチジクと胡桃入りのライ麦パンを、それぞれ1/2サイズで買いました。

このお店にはビールやワインとともに軽く食事するような場所があり、フランスの田舎風がちょっと間延びした感じですが、ガラス越しにお庭があるような造りがいい感じでありました。

帰宅後、お夜食がわりに食べてみると、間違いなくうまい! いい粉の香ばしい香りがして、食べた後にはかすかに酸味が残ります。たまたま醗酵バターが買ってありましたから開けましたよ。こういう本格フランス式パンを食べるときには醗酵バターでうまさが増します。一方イチジクと胡桃のライ麦パンといえば十余年前には私のお得意レパートリーでしたから、食べ比べでございますね。ポールのパンは、回りの堅い皮が厚すぎますよ。フランス人は歯が丈夫なんですね。でもやはり本物の美味しいパンです。これにはハチミツが合います。できれば焼きたてにハチミツかハチミツバターをたっぷりつけて食べたいと思いました。(12月20日)

2007年12月7日

ニットの帽子

12月2日、落語会十周年記念のパーティーを中座して、Mちゃんととあるファミレスへ行きました。そこへMちゃんの娘のJちゃんが来てくれるというからです。初めてのご対面です。現役の高校生です。ワクワク・ドキドキでしたが、果たして気持ちのいいお嬢さんで、おかげで楽しい時間を過ごしました。そしてMちゃんと私は、私達が毎日一緒に過ごしたのが今のJちゃんの年だったのねえ、と感慨にふけりました。

ところでその晩、JちゃんはiPodに大きなポンチョ姿で現れました。黒い太い糸のニットで、いかにも若々しく似合っていました。しかし、しかしですね、Mちゃんが黒ばかり着るから、親子で黒なの?!思ってしまったのですよ。人様の趣味に対してなんと僭越な‥‥‥‥。しかしすぐに「黒ほどアクセントが生きる色もないぞ」と気がつきました。黒いポンチョのMちゃんがカラフルなニット帽をかぶったらカワイイだろうな! だから勝手にかぶせることに決めました。



翌日には毛糸を買いに行きました。太い糸でカラフルな編込みにしようと、パピーの《スペクトルモデル》を何色が選びました。帰宅するとさっそく編み始めました。これはアナトリア地方(トルコのアジア側)の伝統的な模様で、模様と模様の間がおのずと模様になってしまう面白いパターンです。ポンポンはわざと帽子に使った色を避けて、手持ちの中細でボタン色というかマゼンダというか、別の色にしてみました。2日で出来ました。セーターに比べ、帽子とはあっという間に完成するのでした!



それでMちゃんの分も作りたくなり、すぐに取りかかりました。先日三ッ葉屋さんで手に入れたイタリアのFilatura di Crossaの《Mrizioso》です。黒に鮮やかな色が何色もからんだスラブ調です。お店にあったサンプル作品の帽子を思い出しながら、似せてみました。ただし、ポンポンは同じ毛糸ではなく、色うつりのいい橙色で小さめに作りました。

(このように色のきれいな凝った糸は、帽子など小物にしたほうがアクセントになりきれいに見えるかもしれません。もしセーターなら、大きすぎて糸の個性が見えにくくなったり、却って地味に見えたりしそうです。)

果たして親子は気に入ってくれるでしょうか? とまれ、いろいろな糸を少しずつ使ったので糸がたくさん余ったし、太い糸の帽子はテキトーに編んでたちまち出来てしまうのが面白くて、もっと編みたくなりました。以前の残り糸も出して並べてみると楽しくなります。どうにも頭が固くてなかなかデザインが思い浮かびませんが、必要のためよりも「作品制作」の気分でいくつも作ってみようと思います。

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