お買物のはなし・新旧おりまぜスローにやります

2007年10月29日

丸の内、丸ビル、その他


大手町の帰り、方向も定まらぬまま歩いていると東京駅に出ました。ということは、ここに丸の内ビルヂングがあったのね、と見上げると、信じられないような、実になさけない気持ちになりました。なにこれ? 

前にここを通ったのは十余年前で、取り壊した直後なのか地下を作っていたのか、囲いの向こうにクレーンの腕だけが見えました。そのときもがっかりしたものです。80年代半ばに私が働いていたのはかなり無機質な隣の新丸ビルでしたが、丸ビルは本当に素敵だったのですよ。耐震偽装などありえない時代の石造りで、とくに1階の商店街など大きな十字の通路に沿って1区画ごとに木のドアとガラスのウインドウがあって、限られた空間をお店ごとにアレンジして、落ち着き、貫禄、風格といったものがありました。果物屋さんとパーラーは千疋屋、文房具屋さんははいばら、和菓子屋さんは清月堂‥‥‥‥名店ぞろいで、今は青山にある老舗の毛糸屋さんの三ッ葉屋も2階にありました。他にも花屋さん、陶磁器屋さん‥‥‥‥ありとあらゆるもの。外からも入れる明治屋やポールスター。ヨーロッパの昔の商店のようで本当に本当に素敵でした。トイレのドアのノブだって真鍮とガラスですよ。上の階のオフィスも木のドアで、その上にガラス窓があって、そこに部屋番号が書いてありました。50年代のアメリカ映画の探偵事務所みたいでね。木製のファイルケースや黒のダイヤル式電話機が一番似合う場所でした。

とはいえ、じっさいに毎日お仕事している居住者にはオフィスの区画も手狭になったかもしれません。OA化が進み、インテリジェントビルの時代になり、霞ヶ関ビルだって90年頃には大規模なリニューアルを行ないました。しかし合理性一本やりではなく、銀座の奥野ビルのように古い良いものの価値を知る人達に受け継がれていけばよかったのに。などと思いつつ案内板に目をやれば‥‥‥‥これってホテルじゃありませんか! ふざけてますよ、こんなの。商店街のテナントもたぶん全部がチェーン店や支店で、いったい何処にこのビルの個性があるんでしょうね? こんな所が「新名所」として大々的に宣伝されて、ここを目的に奥様方が大挙して押し寄せるのですか。‥‥‥‥嘆かわしいことです。と思いつつ、地下で安いコーヒーをすすりました。(10月28日)

ちょうど今、テレビで東京中央郵便局の建物を高層ビルにするか保存するかの話をやっています。東京駅の駅舎は保存がきまっているそうですが、中央郵便局は見かけも派手ではないし賛否両論です。私は昔のものが好きで近頃のビルにはウンザリなので、残したいというより今風にしないでほしいのですよ。こんなに愚かで下品でカネカネカネの今の「有力者」達の思うままに都市も国家も破壊してほしくない。東京駅を真ん中に、右に中央郵便局、左に丸ビルというかつての眺めを100年先にも見たかったと惜しむばかりです‥‥‥‥(10月31日)

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